教えるべきことは、今教えた。
これ以上に何があるのか。
アデルはわざとらしく眉をしかめ、深々とため息をついた。
「今、教えたろう?」
「はい……。でも、私が知りたいのはアデル将軍の技術なんです」
「は……?」
少女はあからさまに怯えた様子でアデルを窺う。
他国の貴族であり、大陸一のアデル。
同じ任務に参加していたなら、少女もアデルの実力を目の当たりにしている。
少女にとってアデルは雲の上の存在だった。
そんな人物と話をしている。
それだけでも緊張してしまうのに、アデルがわざと放つ冷たい雰囲気に怖くなってしまった。
だが、それでも少女はアデルから目を逸らさない。
その瞳に宿る意志を、アデルは感じた。
「私は強くなりたいんです」
「……」
「まだ入団したての新入りで、実力だって大したことないですけど、強くなってイアン様の力となりたいんです」
主君を守りたい。
その言葉の中に、アデルは自分の姿を重ねていた。
