すぐにそれが、矢の飛ぶ音だとわかった。
しかし、それはあまりいい音ではなかった。
実際に射を目にしなくとも、実力者の射でないことは明らかであった。
それなのに、足は自然と音の方へ向かう。
あえて理由を付けるのなら、それはきっと酔いのせいだと言うだろう。
町の中にある大きな広場。
昼間は温かな日差しの元、住民たちが笑顔を浮かべる憩いの場として賑わっている。
だが、夜になるとその表情は一辺する。
しん、と静まり返った空気が広場に重くのしかかる。
人気のない空間。
真っ暗な闇の中、美しい金糸の髪がぼんやりと浮かんでいる。
真っ直ぐに伸びた背。
ギリギリまで引き絞られた弦。
少女の横顔は前方にある木のみを直視し、一寸たりとも目を逸らさない。
アデルは足音を立てないように近づいた。
見覚えのない少女であった。
シェーダに少女の兵はいない。
つまり、彼女はメルディの兵ということだ。
(メルディの新人か。さて……どれ程のものかな)
志願兵の少女。
その点ではアデルの興味を引いていたが、それ以外はおもしろくない。
普通の弓兵だった。
