心を残すこと。
人にも、物にも。
アデルは無意識のうちにそれを怖がっていた。
大切なものは、エルク。
兄弟のように育った、弟のようなエルク。
シェーダ王国という大きな責任を背負った彼を、生涯支え続けると誓った。
誰に何を言われようとも。
自分の信念に、誓った。
非難も、中傷も、全て受けとめる。
受けとめて、跳ね返してやる。
心はいつも、エルクの元へ。
大切なものは、二つもいらない。
何か一つを選ぶということは、何か一つを失うということだから。
母であるアイリスも、王と愛する人という二つの大切なものを持った。
そして彼女は、愛する人を失い王を選んだ。
全ての大切を守ることは不可能だ。
だからアデルは、何にも心を奪われず、縛られない。
それを臆病だと非難されても、アデルは「そうだ」と頷くだけ。
どんな言葉も、エルクを守るという固い殻を貫くことなど出来ないのだ。
