若くして近衛兵に抜擢された才を発揮し消えていくカトルの背中を、二人は目を丸くし見つめていた。
「さすが、メルディ一番の俊足。あの身のこなしは鍛練だけでは習得出来んだろうな」
「カトルさんの速さに勝てる人はどこにもいませんから」
「少し話してみたかったんだが……」
アデルは口元を隠すように頬杖を付き、ため息を吐いた。
その姿に、ルイは小さく笑う。
「カトルさんは気さくですから、すぐに仲良くなれますよ」
「そうか。それはよかった」
無邪気な笑顔につられ、アデルも目を細めた。
アデルは気付いていないだろう。
その微笑みは彼が社交場で浮かべる愛想笑いよりも、ずっと自然で人間味に満ちていることに。
本人もはっきりと自覚していなかったが、ルイには心を開いているのだ。彼女の前では、自分を取り繕う必要もない。
