賊が二名捕らえられたことを確認し、ライラは顔を上げた。
現在部隊が留まっているのは木を切り倒し作った道。
左右を囲む森にはまだ賊が残っていた。
さすがに雨の中で不利な戦いを続けた部隊は、激しく消耗している。
これ以上の戦闘は、隊員たちにとって辛いだろう。
右側の森には、かぶさるように崖がそびえていた。
雨に打たれ、土肌はぬかるんでいた。
反対に、左側の森は少し進むと緩やかな坂となり、急に斜面の角度が大きくなるという危険な場所だ。
主にルイが担当した側であり、敵の数も右の森よりは少なかった。
ライラはアデルの元へ駆け寄ると、首から下がる笛を取り短く二回鳴らした。
捕獲完了を告げる音に、歩兵隊の中でも屈強な者たちが動けなくなった賊を肩に担ぐ。
そして、ライラが叫んだ。
「前方へ走れ!早く!!」
隊員の反応は早い。
ライラの指示が飛ぶと同時に、迷いなく走りだした。
誰もが、ライラには何か考えがあるとわかっているのだ。
