金色の師弟


いつも戦場で、ルイはどこか哀しそうな顔をしていた。

まるで敵にも、心を痛めているかのように。

だが、今のルイには矢を放つことに一寸の迷いも見られない。

例えその矢が、人の命を奪おうとも。

その理由を、アデルは知らない。

知らないが、アデルはいつのまにか微笑を浮かべていた。

(……ルイに背中を任すのも、悪くはないな)

背後を気にすることなく戦えることに、アデルは戦場では考えられない程安心して弓を引いていた。

弓兵部隊が牽制をし、潜り抜けた賊には歩兵隊が剣を振り、槍を突き、それ以上の接近を許さない。

そして足踏みした相手をアデルとルイが着実に射ぬく。

「アデル、そろそろ終わらせる。適当に生け捕れ」

ライラに声を掛けられ、アデルは首に掛けられていた笛を服の中から引っ張りだす。

そして軽く口を付け、笛を吹いた。

山中に響き渡りそうな甲高い音が、雨に負けずに長々と途切れずに響いた。

それは、賊の討伐から捕獲への移行を示す合図。

「多くはいらん!数名でいい!!」

張り上げられたライラの声に、隊員たちは雄叫びで返す。