金色の師弟


大切な人を失いたくない。

ただその一心でルイは矢を放つ。

激しく打ち付ける雨に減速することなく、ルイの矢は真っ直ぐに男へと飛ぶ。

斧を握る手の甲に深々と矢が刺さり、男は痛みに悶えながら斧を取り零した。

その隙を逃さず、アデルは手にした短刀を正面から男の首に突き立てる。

「か……はっ……!」

男は声を上げる時間も与えられず、鮮血を吹き出し、膝から崩れ落ちた。

アデルの額をつたう冷や汗は、雨に流された。

それでも額を拭い息を吐いたアデルの背中に、ルイはぴったりと背中をくっつけた。

「アデルさん、一人で頑張らないで下さい」

肩越しにルイはアデルを弱く睨む。

アデルが一人で戦うのは、それだけ彼の実力が特出してしまっているから。

わかっていたから、ルイは唇を噛む。

「……私が、背中を守りますから」

小さな呟きは雨音に掻き消され、ルイは再び弓を構える。

ルイの静かに燃える瞳に、アデルは一瞬目を疑った。

敵意をむき出しにしたルイの姿を、初めて見たのだ。