金色の師弟


アデルは弦を引き絞り、木々の間を縫ってこちらへ近づく山賊の一人に狙いを付ける。

その男が木と木の間を移動する一瞬の隙を付き、アデルは矢を放つ。

風よりも速く、アデルの矢が男の首へと突き刺さった。

走っていた男は足を止め、そのまま崩れ落ちる。

たった一本の矢に絶命させられた仲間。

狙いを外さない《漆黒の風》の矢。

自然と、山賊たちは及び腰になっていった。

だが、相手は弓騎士。

接近してしまえば驚異はないと気付き、賊はすぐに動き出した。

部隊の攻撃は牽制程度の威力しかなく、足止めの効果も薄い。

両側から部隊に迫る賊を射つには、一人では足りなかった。

(くそ……!)

隊員たちが必死になって足止めの矢を放つ。

それも、アデルの腕を信じてのこと。

アデルは二本の矢を同時に放つ。

一本は賊の頭を射ちぬき、もう一本は賊の背中を掠めるだけだった。