「さて……ここからが本当の勝負だ」
すでに前衛部隊とは距離が開いてしまった。
もしもこちらが襲われた場合、助けは期待出来ないだろう。
いや、襲われるのは確実に後衛部隊だ。
なぜなら、近接戦が不得手な者たちが集まっているのだから。
アデルはライラへと、真剣な眼差しを向ける。
「もしも賊との交戦に入った場合は、すぐに逃げてくれ」
金色の瞳が、真摯にライラを見つめていた。
ライラの才能を失わせるわけにはいかない。
だが、アデルの気持ちとは正反対に、ライラは彼を強く睨み付けた。
「僕にも戦う手段はある。それが武人とは違うだけで」
見たところ、ライラはフードの付いたマントにすっぽりと身を包み、武器などは手にしていない様子だった。
ライラは身なりに気を遣わず、そのためマントの下は質素な衣類を身に包んでいる。
動き易さを重視した、薄手で軽い素材を使った衣類は、上下ともに手首足首までの長さがあった。
「僕は、戦える」
きっぱりとそう断言するライラの瞳に迷いはない。
アデルは「わかった」と頷き、それ以上は逃げろなどと口にすることはなかった。
