そして皆が自身の武器に手を掛け、いつでも動き出せるように心の準備をする。
誰に言われるでもなく周囲に気を払い、微かな気配も逃さぬよう神経を集中させた。
隣に立っていたライラが、静かにアデルの耳元で囁く。
「流石だ、将軍」
初めて将としてのアデルを目の当たりにしたライラは、素直に感心していた。
将であり、策士でもある最強の弓騎士。
しかし声音にはからかいが含まれていたため、アデルは肩を竦めて苦笑した。
「将軍なんて大層なものではないんだがな」
ライラは微かに頬を緩めると、軽く首を振った。
初めて目にしたライラの微笑みに、アデルは目を丸くした。
「お前には器がある。僕はお前を嫌いだが、その才能は好きだ」
飾り気のない真っ直ぐな言葉に、それが確かなライラの本心であると思い知らされる。
同時に、言葉を飾らないライラがひどく羨ましい。
本当に伝えたい言葉に飾りはいらない。
わかっていても、余計な飾りを付けないと本音を伝えられない現実がアデルにはもどかしかった。
