「賊からはまるで俺たちがはぐれたかのように見えるだろう。だが、違う!俺たちは賊を迎え撃つために足を止めたのだ!!」
本当にこの事態が作戦であるかのように、仲間たちを信じ込ませるアデルの機転と演技力に、ライラは素直に感心していた。
「つまり、俺たちがこの作戦をお前たちに伝えなかったのは、あまりに堂々としていれば賊に策があることを知らせてしまうからだ」
すかさず、ライラも口を開く。
ライラからの助け船に、アデルは微かに笑みを浮かべた。
それなら今話してしまえば意味がないのでは?と尋ねられれば終わりだが、希望を見いだしたこの状況で、そこまで頭が回るものはおそらくいない。
アデルは顔を上げ、全体を見渡す。
最後尾ではルイが、両手で大きな丸を作っていた。
全員が、欠けることなく揃っている合図だった。
「第一段階よりもきつい戦いになるだろう!だが、勝つのは我々だ!」
アデルが不敵に微笑んだ。
自信に満ちたその表情に兵の多くが励まされ、弱気になっていた心を切り替える。
