金色の師弟


作戦とは違う状況。

降り止まぬ雨。

悪条件の中、隊員たちの中には不安げな空気が流れる。

互いの顔を見合い、隠しきれない疲労に支配された視線をさ迷わせる。

足を止めたことで、意識していなかった疲れがのしかかっていた。

(まずい……。士気が下がった)

空気を敏感に感じ取ったライラは、軽く舌を鳴らしアデルを見上げた。

だが、アデルは対照的に強気な笑みを浮かべいる。

驚いて目を丸くしたライラが見たものは、恐怖も怯えもなく、雨音を掻き消す雷鳴の如く声を震わすアデルの姿だった。

「予定ではすでに賊との交戦ポイントを過ぎた!よってここからは作戦を第二段階に移行する」

隊員の中にどよめきが広がる。

なぜなら、作戦の第二段階など、誰も聞かされていなかったからだ。

それは、隣のライラも同じ。

「賊は警戒しているのかもしれない。よって第二段階は前衛部隊が先に進み、後衛部隊はこの場に留まる。そして少なくなった兵を狙う賊を待ち伏せる!」

凛々しく響くアデルの声に、今まで不安のみを顔に浮かべていた隊員たちの表情が少しずつ晴れていく。

前衛隊と離れたことは事故ではなく作戦だ。

そう思うだけで、気持ちは少し楽になる。

アデルは迷い無き真っ直ぐな金の瞳で声を張り上げた。