金色の師弟


「アデルさん!待ってください」

不意に、アデルは後ろから腕を引っ張られた。

引っ張ったのは、後衛部隊の最後尾を務めていたルイである。

ルイは息を切らしながら、雨音に負けないよう声を張り上げた。

「ペースが速すぎて、遅れそうな人が何人もいます」

「本当か?」

アデルは前方を確認する。

次第に、前衛部隊の後ろ姿は薄い霧の中に消えていった。

(さて……どうする?)

足を止め、後衛部隊を纏めるか。

それとも、無理をしてでも前衛部隊との距離を保つか。

(……迷うことでもないな)

クトラは隊長としての経験も浅く、山賊討伐の任など初めてのことだ。

その緊張から、隊のペースを上げすぎているのかもしれない。

これくらいの不測の事態ならば、対処が出来る。

アデルは隣に並ぶライラへと目線を向けた。

ライラもそれを受け取り、頷く。

「全体、止まれ!」

アデルは右手を地面と平行に持ち上げ、全員の動きを止めた。

無理に追い掛けて隊がばらばらになったところを攻められるよりは、まとまって迎撃すべきという判断であった。

「後方に行って、遅れた者がいないか確認してきます」

「頼んだ」

ルイは頷き、隊員たちの間を縫うように走る。