金色の師弟


アデルは目線を地図から動かさず、唇だけを動かした。

「例えば交易品を運ぶ業者を襲った場合、その被害の報告は納品日に品物が届かないという事態になるまでは気付かれないかもしれません。ですが、村を襲えば逃げ出した村人が報告さえすればすぐに伝わります」

アデルはライラ以外に説明するように、ゆっくりとした口調で告げる。

だが、それがどうしてアデルにとって引っ掛かりとなったのかわからず、ルイがおどおどとした態度で尋ねた。

「あの、何故、すぐに伝わる必要があるのですか?」

やはりライラ以外が、大なり小なりルイの言葉に頷いていた。

皆の気持ちを代弁したようなルイの問い掛けに、アデルは苦笑しながら肩を竦める。

「そこまでは、わからん。ただ、ライラが言っていた通りデモンドの自作自演だとしたら……予想は、出来る」

それに、とアデルは言葉を続けた。

「仮に賊がデモンドの差し金だったとしたら、オネストとの交易品に手出しはしたくないだろうな。自分たちが受け取るはずの商品だから」

アデルは視線をライラに向ける。

ライラは相変わらずの仏頂面で、頷いた。

「おそらくデモンド王国は、焦っている」

迷いなく言い放つライラに、全員の視線が集中する。