「それはそうだ。だから、二国間の物流は必ずここを通る」
ライラは傍らにあったオネスト国の地図を、中心に置いてある低いテーブルの上に広げた。
そのテーブルを囲むようにして座っていた全員が、地図を覗き込んだ。
ライラの指が地図上をなぞり、山脈へと行き着く。
指先を目で追っていたノルンが、意外そうな声を上げた。
「マデラン山脈には、山道は一つしかないのですか?」
「はい。元々この山脈は野性の動物も多く木々も深いため、山道というものはありませんでした。ですが、デモンドと交易をするようになり、木を切り道を作ったようです」
それはミーナが生まれるより、遥かに昔の話であった。
ライラの指が、山道に差し掛かり、止まる。
