アデルの気持ちは、ルイには全くわからない。
わからないが、可愛がってもらえていることは確かだった。
例え、可愛い弟子という立ち位置でも、こうして触れ合えるなら十分だ。
ルイはそう思うことに決めた。
報われる恋ではないのだから、望みすぎてはいけないと強く心で繰り返す。
「手、触られるのは嫌なんですよね?だから……」
「ルイにだったらいいさ」
「また……そういうこと……」
気持ちを自覚してしまってから、ルイはアデルの軽口に喜んでいる自分に気付く。
アデルは不意に指を絡め合った手を引き寄せた。
「まだ一ヵ月しか経っていないのに、見よう見真似で俺の技を形にするとはな」
「……え?」
至近距離にあるアデルの顔。
濡れた髪が普段よりも色っぽく、ルイの心臓はどきまぎと音を立てた。
耳元で囁かれたアデルの声に、ルイは堪え切れなくなり彼の手ごとアデルの胸を押し返す。
「近いです!いつもいつも!」
「ははっ。お前が面白い反応を返すからつい……な」
おどけて片目をつむってみせたアデルに、ルイは沸き上がった怒りを消火させていく。
要は、呆れているのだ。
