(誰か……!) 誰か、と助けを求めた時、ルイの頭に浮かぶのは尊敬する師の姿だった。 「助け、て……アデルさん!」 「ルイ!?」 「!」 先程よりも張り上げた声に、いるはずのないその人の声が返ってきた。 薄く開いた視界に映るのは、闇のように深い漆黒の髪をなびかせ泉へと駆け寄る男の姿。 (アデル……さん?) 男は上着を投げ捨てると、激しい音を立てながら泉へと足を踏み入れた。 そして胸の高さまで水が迫ると、泉の底を蹴り泳ぎながら近づいてくる。