「危険な仕事は頼まないんじゃなかったけ?」

「俺もそう思ってたんだけどな。この仕事頼んだヤツはよっぽど常識が無いんだろうな。」

「うん、まさか私もこんないきなりはちあわすとは思ってなかった。」

「ま、まぁ危険って言っても俺一人で倒せるし、離れて見ててくれよ。」

「う~ん、そうしたいのはやまやまなんだけど後ろにも影らしきものがいらっしゃるんですよねー。」

は?そう言って振り返る。

「マジか…。俺一人で倒せるけど守りながらは若干不安があるんだが。」

「マジで?じゃあ私も戦って良いよね?緊急事態だし。」

「良いよね?ってお前…。怖くねーのかよ。あんなもんはじめて見たんだろ?」

「そんな怖くはないかな?何か人っぽいし。」

「なっ、ヒトガタだと!?おい!!場所変われ!!」

慌てたようすで私を押し退ける。

「な、何!?」

さっきまでわりと呑気に話していた時とは違う強い口調。
緊張した顔を見て私も気を引きしめる。

「ど、どうしたの…?」

「あいつはヒトガタって呼んでる影でな、頭がいいんだよ。つまり闇雲に攻撃しても当たらない。頭使って攻撃してくるからこっちもちゃんと考えてねぇと足元をすくわれる。」

「つまり?」

「めんどくせぇ相手ってこと。俺一人ならなんとでもなるんだけど…。ここは逃げたほうが得策か?」

「大丈夫だよ。私は。ヒトガタってヤツは染井君が相手するとしてこっちの犬みたいなのは任せてよ。自慢するほどじゃないけど強いんだから、私。」

「武器もないのにどうやって戦うんだ?」

「んー、総合武術の道場の娘だから素手でも戦えるよ?」

「あぶねーよ。逃げないってなら武器使って戦ってくれ。貸すから。何が使える?」

「大体なんでも。さすがに銃は無理かな。」

「ならスタンダードに日本刀。」

そう言うと胸のブローチのダイヤルを回した。少しのノイズのあとに女の人の声がした。