夏のある日の夕暮れ。
一人の少女が夕日に照され長く伸びた影を揺らしながら歩いていた。
新しいサンダルを履いて半ば跳ねるように暑い中を歩く。
そんないつもと変わらない日々が今、変わろうとしていた。

少女には悩みがあった。悩みと言うほどのものではないかも知れない。
だが、彼女にとってはとても重大なことで真剣に考えていた。
悩みと言うのが、自分の影のことだった。他の人に話しても見間違いか何かだと相手にしてもらえない。だが、いくらなんでも影の形が露骨に変わったり、影が消えたりしたら見間違いも何もないだろう。今のところ自分に悪影響を与える訳でもないから良いだろうとたかをくくっていた。

それがただの杞憂で終わらなくなるのはもう少し後の話し。