……お母さん。

お母さんも、ずっと昔にこんな光景を見ていたの?

チビの私と、それを見上げて目を細めるお父さんの、眩しそうな微笑みを。

「……輪子さん?」

一瞬、雨が降ってきたのかと思った。

「輪子ちん……」

自分が今、泣いているのだという事に気づくまで、少し時間がかかった。

「大丈夫。大丈夫だよ輪子!絶対に、大丈夫なんだから。

大丈夫になる日が、絶対に絶対に来るんだから!!」

苺に抱きしめられながら、一哉にそれを見守られながら。

私は、ついに涙が止まらなくなった。

「……え~ん………!!!」

しゃくり上げるまで、泣いた。

声を出して、泣いた。

コドモみたいな苺の腕に抱かれて。

赤ん坊みたいに泣いて泣いて泣いて泣いた。

そして。

お母さんが亡くなってから、今まで一度もまともに泣いていなかったという事に、

その時私はようやく気がついていた。