「苺さんの名前、よく飲み屋で輪子さんから聞いてたから…

珍しい名前だなって印象が強くて覚えてたんです」

「はぁはぁ。そんでリュックの名札見て、かたまってたんだぁ」

『六年三組 相川苺』

名札のせいもあったのかなぁ?あたしの歳聞いて、驚いたのって。

「はい。ラッキーでした」

輪子の家に入ったとたん、いつの間にやらあたしに対して敬語になってる一哉君。

「ふーん…そういう経緯が、あったの。すごい偶然ね」

静かにストローでアイスコーヒーの氷をカラコラと混ぜながら、

輪子は納得したようだった。

「輪子さん、迷惑だった?俺…輪子さんの地元の駅だけは聞いてて

知ってたからさ。

家とか全然知らないのに…なんか、足が向いちゃったんだ。…心配で」

「ううん。私も。電話くれてたのに、連絡しなくって、ごめんね」

ふむむぅ…。

輪子、この男の子の事、別に嫌ってはいないみたい。

嫌ってはいない、どころか、なんとなく気に入ってるっぽい。

それに、この男の子の好意にも、とっくに気づいてるっぽい。