くじらのてっぺんで背中と背中をくっつけ合い、私達は黙って空を見上げていた。

「ねぇねぇ輪子ちん」

「ん?」

「あたしねぇ、今回はねぇ、すっっごーーくいい失恋したんだよ」

先に切り出したのは、苺だった。

「…やっぱりOK?」

「うん!超OK!!すっごく幸せだったもん。たった数週間だったけど」

背中から響く苺の声。

体温や、匂い。

なんだか、とっても気持ちが安らぐ。

「苺」という女の子のかたち。

「そっかぁ。よかったね」

「うん!…でもね、輪子と陽司君が別れちゃったのが、すごく淋しい。

だってあたし、ずっと二人に憧れてたんだもん」

…憧れかぁ……。

「そんなの全然知らなかったよ。…それを言うなら私だって、ずっと苺に憧れてた」

「へっ?」

「何度も玉砕してるのに、何度も恋をしてるとこ。

素直なとこ。めげないとこ」

私にはない、魅力のかたまり。

「…私も苺みたいに、恋がしてみたかったんだ。

たぶん、ときめいたりしてみたかったんだ」