『ピンコンッ』

勢いで、押してしまったボタン。

勢いで、降りてしまった停留所。

今日はいったい、なんて日なんだろう?

こうなったら勢いで、駆け寄って行くしかない。

「おはよう!」

山中君、びっくりして固まってる。

いっせいに振り向いた女の子三人のうち、真ん中にいる、

あたしと同じくらい背の低い女の子は、真っ赤な鼻をして涙を浮かべてた。

「…もしかして、この子がM高の彼女?」

右側の女の子が、山中君を見ながら聞く。

「…そうだよ」

そう彼が答えたとたん、真ん中の女の子はあたしの真横を通り抜けて

走って行ってしまった。

「あさみ!!」

彼女の名前を呼んだのは、山中君。

二人の女の子は、黙って『あさみちゃん』の後を追いかけて行った。

あたしの真横を走り抜けた瞬間、微かに香った『あさみちゃん』の香水は、

山中君と同じ匂いがした。