あたし。

初めて会った時以来、顔も見てないのに

毎日毎日、山中君の事ばっかり

思い出しては胸がきゅんと窄まって。

それはもう、何度だって心当たりのある

あの、感情。

そう。「これは恋なんだ」って

確信していた。

あんなに泣いて苦しんで

辛くてたまらなかった失恋。

また、繰り返してしまうのかも知れないのに。

止められなかった。

ある日、意を決して、山中君をデートに誘おうと

ママが仕事に出かける時間を見計らって携帯を手にした。

口で言おうかメールにしようか一瞬迷ったけれど、

「口で言うのが恥ずかしい」とか

「断られたらかっこ悪い」とか

そんな事はもう、どうだってよくて。

何にも勝る気持ち、

「声が聞きたい」。

その想いに優しく背中を押されるように

着信履歴を開いた。