「でも…学校行かないといけないし」

情けないほど小さな声で私が言うと、目の前でずっと黙ってた輪子さんが

「学校に行くよりも、大事なことってあるよ」

と言った。パッと目が合うと、優しく微笑んだ。

「苺と憧子って、体質まで同じだよね。泣くと、左目だけ一重になるの」

思わず左目を手で押さえたら、ママも慌てたように隠した。

「ママ…なんで?ママも、泣いたの?」

こないだの大泣きを思い出した。

「ここんとこ、ずっとよ」

輪子さんが代わりに答えるとママは

「だって、悲しいんだもん」

真っ赤になって言った。

「大好きな人が泣いてたら、悲しいんだもん」

「……変なの」

変なの。私のことなのに。ママには関係ないのに。

「変なの」

もう一度言うとママは

「変で、いーんだもん。ママは、憧子ちんも、憧子ちんの好きな男の子も

大好きなだけだもん」

と、すねたようにそっぽを向いた。