「あれ?…」

苺、クッション抱いたまま、いつのまにか寝ちゃってる。

小さな女の子みたいな寝顔。

ぽかんと丸く口が開いてる。

「苺、風邪ひいちゃうからベッドで寝な?」

「…うぅーん…」

むにゃむにゃと何かつぶやいている、寝ぼけた苺をベッドに入れた。

「おやすみ」

「………ぐぅ」

くるりと天然カールした、苺の長いまつげを見つめながら

(…ロマンチックは私の方かもね)

ふと思った。

今の陽司と私の間には「特に何事もなさ過ぎる」んだ。

それはたぶん均等に、順調に、スポンジに生クリームを塗り重ねていけてるっていう

証拠なんだろう。

最初はほんとにうれしくて、夢中だった。陽司とのケーキ作り。

きっとこの人となら、どこまでも空高くそびえたつタワーケーキを作れるはずだって、

信じてた。

なのにどうして私の分の生クリームは、こんなにも残量が減ってしまったんだろう?


…いつのまに、こんなにも。