あたしだって昔は、母親と特別仲良しではなかったし。

…だって、あーいう親だから。ってのを抜きにしても

ろくに喋らなかったけれども。

むしろ輪子の方が数倍数十倍あたしのことを知ってるし

話しやすかった。聞いてほしかった。

それでも、なぁ。

やっぱり寂しいもんだよ。

なんか親って子供にずっと片思いしてるみたいなもんなのかな、なんて思う。

そろそろ子離れの時期ってこと?えー!もう??

「…マ」

せめて二十歳になるくらいまでは… もっと色んなこと話したいなぁ…

「…ママってば。ママ!!」

「ふぇ!?」

「あははは」

驚いたあたしの素っ頓狂な声に、芳明くんが笑う。

隣で憧子がこっちをぶーたれた顔で見てる。

「聞いてなかったの?もう。…私たち、先に帰るから」

「ああ…うん。ありがとね、芳明くん、憧子」

ひらひらと手を振ると、芳明くんが軽く会釈をした。

憧子は一度も振り向かず部屋を出て行った。

「…なんだかなぁ。どーなの?輪子。うちのお姫さまのあの態度は」

「芳明くんが一緒だから、よけいよ。照れてるのよ」

「俺もそう思うよ。親に対してって、あんな感じだよ」

一哉くんが言う。