苺はその後、検査を受けて、妊娠している事がはっきりわかった。

さっき、苺の前から立ち去って行ったばかりの茶髪の男の子の子供が。

苺の中で今、生きている。

「ねーねー輪子パパァ~」

帰りの車の中、別段落ち込んだ様子もなく、かと言って検査前の元気さもなく。

なんとなく、きょとんとした力の抜けた顔で苺は座っていた。

「ん?なに?」

「…輪子パパと輪子ママはさぁ、子供が欲しくて輪子を作ったんだよねぇ?」

コホッと軽く咳払いをした、お父さん。

「あ、ああ。うん、そうだよ」

まだちょっと『イチゴ免疫』があまりついていない、お父さん。

「そうだよねぇ…じゃああたしは?あたしは、どうなんだろうなぁ…」

「そりゃあ苺ちゃんだって、望まれて産まれてきたんだろう。

なぁ?輪子」

「うん」

「そう、かぁ…」

お母さんの再婚。

彼氏との別れ。

そして…妊娠。

今、苺はいったいどんな気持ちなんだろう。

喜怒哀楽を、いつだってわかりやすく表す子なのに。

こんな苺に出会った事はない。

だから、わからない。

まるで、抜け殻みたいな。

迷子みたいな、苺。

何を思っているのだろう。