そうだ。

あたし、輪子に電話した。

泣きながら、助けを呼んだんだ。

そうしたら、輪子パパの車に乗って二人が、駆けつけてくれたんだ。

「ねぇ輪子…輪子パパは…?」

「…今、病室の外にいるよ。廊下のソファーで座ってる。

ちゃんといるから、大丈夫だよ」

病室…

「そっか…ここって、病院なんだ…」

優しい指先。

輪子は、ふいに流れたあたしの涙をすくって、こう言った。

「あのね、苺…今ね、妊娠してるかもって」

「え…?…誰が?…輪子が?」

「ううん…違う。苺が、だよ」

「………………………」

何を思うよりも先に、頭に浮かんだのは。

中二の夏、初めての妊娠をした時の事。

「…かもって事は…じゃあ、まだわかんないんだよね…?」

そして、中絶した時の事。

「うん…そうだね。とりあえず検査してみないと、まだはっきりとは言えないから…」

『もう二度と、中絶なんてしたくない』

繰り返し、繰り返し、いつもそう思っていた。

そう思って、生きてきた。

なのに妊娠したなんて、ありえないよ。

毎回きちんと避妊してるもん。

……してるのに……?