思いがけない言葉にポカンとしていると少女は俺が持っていたペットボトルをサッと奪う。
え?今度はなに!
ペットボトルの蓋をひねると中に入っている水を俺の頭にかけた。
瞬間、冷たさを感じる頭部。
つめた!
「これでよし」
そういった少女は空になったペットボトルの蓋を閉める。
なにがよしなんだ!
もう頭が痛いとか、恐いとかはどうでもよくなっていた。
この人たちは一体俺に対してなにをしたいのか。
気になってしょうがない。
俺は頭がクラクラしないようにゆっくりと上半身を起こした。
「お、少年が起きたぞ!」
歓喜の声を上げる少女。
前髪からしたたる水滴に目を細めながら思い切って訊ねた。
「失礼ですが。俺に水をかけてなにをしたいんですか?」
何故敬語なのかというと、やっぱり恐いからだ。
だって不良だし。
自信満々に少女は言った。
「熱を下げてやってた」
はあ?
「あの、むしろ悪化するんですが」
「なぜ?」
いや、なぜって……。
「頭に水をかけても濡れっぱなしだったら余計熱上がると思うんですけど…」
「……そうなのか?」
そう聞く少女は俯いた。
やべ、これって怒らせた?
「ででも!お、お陰で頭が凄く涼しいです!いやあ、この調子なら熱も下がりそうだなー」
必死の弁解。



