「あれ、契約いらないって言ってんの?じゃあおたく、どうしてここにいるわけ?女の営業なんてニッコリ笑って契約取るんだろ、無愛想じゃだめなんじゃない?」
「・・・申し訳ありません」
あんたになんか笑ってやらねえとたった今決めたのって、ボードで殴りたい。
「生保の営業が枕営業してるなんてジョーシキでしょ。君はしてないなんて、俺は信じな――――――」
その時、何かが空気を切って飛んでくる音と、男の人の「梅沢!」と叫ぶ声が聞こえた。
・・・と、思ったら、あたしの目の前の男がぶっ飛んだ。
あたしは目を丸くして思わず口をポカンと開ける。
そこにはいつの間にやら仁王立ちになった梅沢さんと、いつぞや彼女と一緒に居た眼鏡の男性。
「あーあ・・・」
後ろの眼鏡の男性がため息をついて、頭をガシガシと掻いている。
梅沢さんは華やかに化粧した顔を恐ろしい形相に変え、たった今自分がぶっ飛ばした男を睨みつけていた。
男は叩かれたらしい頭を撫でながら振り向き、苦情を言った。
「・・・痛っ・・・酷いじゃないですか、梅沢さん!」



