キウイの朝オレンジの夜



 生保の営業に対する反応は大体3つのどれかだ。

 1、完全に無視する。2、露骨に嫌そうな顔をする。3、最初からナメきってやたらと絡んでくる。

 こいつは、3だな。あたしは心の中でそう判断した。

 1や2だってこっちは傷付く。ゴミや虫以下の扱いをされることだってあるにはある。でも一番あたし達をうんざりさせるのは、3の客だ。

 年は、あたしと同じ位か、少し上ってとこ。普段は保険なんてとバカにしているか、自分より年下の女性営業をからかってやろうと思っているような輩だと思う。

 本当はこういうタイプは相手にしないのが一番なのだ。

 だけれども、出入り許可後の初日でいきなり無愛想にするのも問題なので、ここは大人しくしてやり過ごそうと判断した。

 だらしなく口元を歪めてあたしの全身を舐めるように見る男におぞ気を覚える。

 ううう~!!我慢我慢!ここ最近なかったのに、久しぶりにやな感じの対応だー!

 立ち募集をしている廊下の隅に寄って、あたしは微笑みを崩さないままで黙った。こんな時に限って廊下には誰も通りかからない。

 早くどこか行け!と心の中で呪っていると、へらへらと笑った男は一歩あたしに近づいて興味ないんだけどさ、みたいな表情を作って言った。

「俺、契約してやってもいいよ。主任まで行くんだからそこそこ成績あるんだよな、神野さんて」

 あたしはついに営業スマイルを放棄して表情を消した。