12月の中旬で、今年はもう数えるほどなのに。

 そんな一年の終わりに、あたしは世にも暗い現実と戦う羽目に。今年は何だ?大殺界かなんかだったのだろうか・・・。

 20分はたっぷりと一人で沼に沈んで、あたしはのろのろと起き上がった。いきなり真っ暗なオーラをまといだしたあたしを他の営業は遠巻きに眺めている。

 昼過ぎの2時で、ほとんどの人は事務所を出ていたから人数は少なかったけど、あたしが前に置いている緑の紙は見えていたはずだ。

 ――――――直接行ったほうが早い。

 あたしは覚悟を決め、事務員さんに解約届けの作成を頼む。そして携帯でFPの渡辺課長に電話を入れた。

 気軽に電話に出た課長はあたしの話にしばし絶句。それから「会議抜け出して飛んでいくわ」と言ってくれて、本当にすぐに駆けつけてきた。

 頼りになる~!必要な時に居ないどっかの誰かとは大違いだわ!と後ろの支部長席を睨みつける。

「早かったですねえ・・・本当に飛んできたのかと思った」

 あたしの呟きに、恰幅のいい体をゆすって笑った渡辺課長が言った。

「信号、ひとつも引っかからなくて、道もすきまくり。今日はついてるかもだぞ。解約も防止出来るかもしれない。電話はしたのか?」

 あたしは頷いた。鞄を持って説明しながら駐車場まで歩く。

「すぐ行きますと伝えてあります。今日は社長もいらっしゃるそうですよ。何回も謝るんですが、理由が電話では聞けなくて・・・」

 課長のミニバンに乗り込み、出発した。