「あるぞ、あれ」
「あれ?」
いきなり何だ?あたしは目を瞬く。・・・あれって、ナンだ?
稲葉さんはベッドから降りて、頭からロンTを被って着た。それから部屋を横切って、冷蔵庫のところまで行く。
あたしに向かって手のひらで、おいでおいでをした。
「何ですか?」
あたしはまた昨日借りた彼のシャツを裸に羽織って、冷蔵庫の前の彼のところまで四つんばいで進む。
近づくあたしを見てにっこりと格好よく笑って、稲葉さんが冷蔵庫を開けた。あたしは横から覗き込む。
独身者用の小さな冷蔵庫には、数本のビールと少量の卵や牛乳。そして真ん中に、大量のキウィが入った籠が鎮座していた。
あたしは目を見開く。
「―――――――――・・・大量、ですね」
そのコメントに、隣で彼はぽりぽりと頬を掻く。
「あまり毎日同じ光景ばかり見るから、体にいいのかなあと思って・・・」
同じ光景。
朝礼が終わるとキウィを食べだすあたし。そのままで事務作業をしている毎朝。それは確かに、うちの支部の通常の光景になっている。



