「・・・綺麗なお顔だなあ~って。羨ましいです」
稲葉さんは、何だ、と小さく笑って、手で顔をこすった。
「やるよ、欲しけりゃ」
――――――――いや、貰えないでしょ。何言ってんの、この人。思わず冷静に心の中で突っ込む。
「・・・いいじゃないか。お前は愛嬌があるし、性格も明るい。それで人望があるんだろう?」
へそ曲がりなあたしは敢えて裏を読んでしまった。
「・・・どうせブサイクですよ」
ぶーたれる。愛嬌と性格でその外見をカバー!って言いたいんだな!
隣から、何でそうなるんだって呆れた声がした。
大きな手が伸びてきてあたしの後頭部に回される。そして引き寄せられ、じっくりと、柔らかくて甘いキスをくれた。
唇を少しだけ離して間近で見詰める。そのまま言った。
「・・・その正直な目が好きだ。小さな口も、可愛い。膨れっ面も。どこもかしこも柔らかい体も。胸も、太ももも、それから―――――――」
あたしは慌てて遮る。
「も、もういいですから!判りましたから!」
恥かしーっ!!褒め殺しかよ、今度は。何であれ、この人には敵わない。
真っ赤になったあたしを抱きしめて、彼は笑う。
それから起き上がって、あ、そうだ、と言った。



