反射的に体を捻ると髪に巻いていたタオルが解けて落ちる。髪の毛が広がり、稲葉さんと同じシャンプーの匂いが当たり一面にパッと広がった。
「――――――ふむ、色っぽいな。これ気に入った」
言いながら彼は自分のシャツを着たままのあたしの色んなところにキスをしていく。
勿論、唇にも。
彼は笑う。酢豚の味がするって。やっぱり美味いな、あの店、って。
「・・・」
もうあたしからは言葉は出ない。
ホテルでなく、彼の部屋で抱かれるのは初めてで、それが興奮の材料にもなっていた。
稲葉さんは口では意地悪なことを言いながら、手や舌や動きはとても優しかった。
あたしはただ彼の海で揺れる。
「・・・弱音だって、俺が聞くから・・・」
抱きしめながら耳元でそう言われて涙を零した。
山下さん、あたし大丈夫だよ。
だってね、素敵な人が一緒にいてくれるの。この人は上司で、営業職の仕事も判ってる。賢くて優しいの。あたしをからかって遊ぶけど、柔らかい笑顔もくれるんだ。だからまた、もうちょっとお仕事頑張るね。これからも、あたしはこの仕事で――――――・・・
あたしは、快楽に手をのばす。そして意識を手放した。



