アイラインもマスカラもシャドーも全部流れちゃうかなあ~・・・。それは酷い顔になりそうだなあ・・・。支部に帰れってことかな。

 あたしは上に向けていた顔を戻す。

 小高い山の真ん中辺りで、眼下に街を見下ろしていた。

 そこには綺麗な景色があった。

 広がる小さな街と、ところどころに公園や街路樹の緑。その上に銀色の数珠のような小さな雨の粒が降りかかっている。

 そして夕方のお日様の光りも。

 雨粒があちこちで光って、キラキラしていた。

 あたしは高いところからその不思議な光景を眺める。

 晴れているのに、水の玉。何て綺麗な。

 あたしは一人で濡れる。だけど、悲しくなかった。営業鞄は重かった。スーツも髪も濡れて台無し。化粧だって落ちてるはず。


 だけど、悲しくなかった。

 それが、今一番大事なことに思えた。