午前中のアポを何とか終わらせて、あたしは山下家へ持っていく書類を取りに支部に戻った。
皆出払っていて、同行営業か稲葉さんも居なかった。
ただ一人残っていた副支部長があたしを見て微笑む。
「お帰り、玉ちゃん。書類できてるわよ。お葬式には出るの?」
あたしは首を振った。
「担当営業ですから。―――――出棺の時だけ、端から見てます」
副支部長は頷いた。
意図しなくても、保険会社の人間がいれば火種が起こることがあるのだ。遺族の保険金の争いが起こることもある。故人の個人情報を手に入れようと近寄ってくる輩もいる。
だから、保険会社としては葬式には出れない。
あたしは書類を届けたあと、ひっそりと山下さんを見送るのだ。
晴れて、綺麗な青空だった。
山下家の遺族、娘さんに書類を届けて説明をした。死亡保険金の支払いにはたくさんの書類が必要なのだ。
「本当によくしてくださいました」
あたしが頭を下げると、娘さんは微かに笑った。



