キウイの朝オレンジの夜



 今日アポが一件しか入ってないのにはわけがあった。

 2月戦で優績者となったあたしは、その研修会議が支社であるのだ。それに出席するために、今日の午後は空けておくようにと前々から言われていた。

 だけど、だけど。

 確かに、契約が貰えるアポじゃないけど。

 体の横で拳を握り締めていた。

「―――――・・・出席しなかったらどうなるんですか?」

 宮田副支部長が辛そうな顔で稲葉支部長に聞く。

 真面目な顔であたしをじっと見たまま、支部長は答える。

「・・・優績者のカウントをされないので、支部の予算が削られる」

 マジで?そんな。あたしは思わず目を瞑る。

 あたしが今日の研修に出なければ、支部の皆に迷惑がかかる?

 小さな支部にとって一人の営業によって加算される予算はデカイ上に有難い。新人教育にも使えるし、皆の士気を上げる食事会に使われたりする。

 この記念月のあたしは色んなことがついていてタイミングもよく成績で支部に貢献出来たので、降りてくる経費をあてにしていたに違いない上司二人を前に、行けませんとは言いたくない。

 最後の最後でそんな。もうため息しか出ないや。