キウイの朝オレンジの夜



 あたしの毎日は、変わっていった。

 恋人が出来ると影響が大きい。それも、長年すれ違ってばかりの彼氏と居たあたしには、職場の恋愛ってのは凄かった。

 だって基本毎日会うでしょ。

 しかも出来るだけ秘密にしてなきゃならないでしょ。

 でも誰も居ない廊下ですれ違った時や、同行営業に行くときの車の中や、対話する時なんかに合わせる瞳や、指や、たまにキスなんかが、毎日の中で蜂蜜みたいな金色でとろんとした甘さを生み出した。

 普段の愛嬌たっぷりの笑顔や上司としての厳しい表情が一瞬で消えて、柔らかくて甘い笑顔に変わる。その彼があたしの瞳を潤ませた。

 そしてあたしに元気とやる気をくれた。

 今ではあたしの生活の基は、朝のキウィ、昼間の稲葉さん、そして夜のオレンジだ。

 全部大切で手放せないものへとなった。

 肌の調子もよく、勿論体調もよく、元気なあたしは多少営業がうまくいかなくても笑ってられるようになった。

 副支部長と大久保さんだけには稲葉さんと付き合うことになったと伝えていたから、ウキウキした話をするのはこの二人だけに限定した。

「よかった、本当。玉ちゃんの輝きが違うもの」

 大久保さんはにこにこと微笑み、背中を優しく叩いてくれた。

「二人とも、演技上手ねえ。まだばれてないわ」

 宮田副支部長が一度そう言ったことがある。特に、朝礼での攻防戦とか上司対話の時の殺し合いをしそうな視線は憎みあってる人たちに見えなくもないわって。