すると彼はあははと笑った。
「なんだ。良かった、欲求が激しすぎて無茶したからどっか痛いのかと思った」
あたしは毛布から顔だけを出して笑う。
「大丈夫です。・・・気持ち良かった~」
「それはよかった。でも気遣ってやれなくて悪かった。もう本当に、俺ギリギリで・・・」
安心したように、息を小さく吐いた。
そしてガシガシとタオルで頭を擦ってから、稲葉さんが布団に潜り込んで来る。
後ろからあたしをがっしりと抱きしめる。彼からシャンプーや石鹸の匂いがした。
あたしは思わず呟く。
「・・・どうしよう、幸せ」
夢だったら凹む、と両頬を叩くあたしの手を、これこれと彼の手が止める。
「神野って自虐趣味があるのか?苛められるのが好きとか?」
うん?あたしは目を開く。
「いえ、そんなことないですよ。苛められるのも詰められるのも嫌いです。締め切りの朝の稲葉さんとの対話は泣きそうになりますし」
「・・・仕事から離れてくれ。イケナイことしてる気分になる」
思わず笑ってしまった。出会ったのが会社である以上、あくまでも部下に手を出した上司であるのは変わらないのに、そんなところを気にするのが。
あははははと笑うと、後ろでぶつぶつ言っていたけど、最後には一緒に笑っていた。



