即、言った。
「稲葉さんが好きです」
誰に笑われてもいいの、どうせあたしはヘタレだ。
「よく言えました」
がらりと表情を変えて、大変美しい顔で微笑んだ。そして一瞬名残惜しそうな顔をすると、立ち上がった。
「おやすみ。・・・お互いに一人寝を頑張ろう」
その言い方につい笑ってしまった。確かに、一度目覚めて潤いつつあったこの体をどうしてくれるんだ、と言いたいけど、そんなこと言ったら終わりのような気がする。この人は喜んで襲い掛かるだろう。そして、目出度くデキ婚になる、なんて将来は嫌だ。
まだ、両思いだとは信じられないあたしなのだ。
「おやすみなさい、しぶ―――――稲葉、さん」
慌てて訂正したあたしに口元をあげてにやりと笑い、片手を振って稲葉さんはあたしの部屋を出て行く。
ドアがバタンと閉まった後―――――――そのあとが、実は大変だったのだ。
回りくどく言えば、あたしは自発的に夢の世界に突入した。
端的に言えば―――――――気を失って、倒れた。
布団の上でなく、部屋の入口でずるずるとへたり込んで。
・・・・だって、キャパオーバーだったんだもん。



