一応、突っ込んでおこうと思って恐る恐る隣を見ながら言ってみた。
すると垂れ目の瞳を見開いて、あたしを凝視している彼と目があった。
「え?」
「え、って・・・え?」
体ごとこちらに向き、稲葉さんは呟く。
「いやだって、お前は俺が好きだろ?そんなこと去年から判ってたけど」
何だとう!??
「・・・は?」
あたしは口が開けっ放しになる。・・・何で、判ってたの?だってあたしはこの2月に気付いたのに!??
驚くあたしをしげしげと見詰めて、稲葉さんはまた苦笑した。
「驚くことか?視線、態度、言葉、全部で判ってた。彼氏とも別れたらしいし、やっと俺の番かって。だけど、赴任したばかりで部下に手を出したとなったら流石にやばいしと思って。よく耐えたぜ、俺」
カラカラと明るく笑う。
あたしはそれを唖然と見詰める。
・・・いや、全部で判ってたって・・・ええええ?
この、この格好良い男の人が・・・いやいやいや、中身は悪魔な美男子が。あたしをずっと狙ってた、だと~!??



