キウイの朝オレンジの夜



 そろそろと口元を押さえて、あ・・・と声を零す。

「・・・いえ、あの、そうでなくて・・・」

 菜々が言い出すのに、あたしはここぞと力を込めて押した。

「菜々、部屋に戻ろう!」

「あ、うん。・・・判った、玉」

 後ろで稲葉さんが呼ぶ。

「神野?」

「あたし!」

 彼を見ないままで叫んだ。

「彼女を部屋に送っていきますから!お休みなさい、支部長!」

 そしてそのまま菜々を押してエレベーターまで突進する。ボタンを連打して扉を閉めると、そのままドアに背をつけてずるずると座り込んだ。

「――――――玉、ごめん。絶交でも仕方ないよね。受け入れるよ、あたし」

 酔いが醒めつつある菜々が同じく泣きそうな顔で言う。あたしは手を振った。

「・・・・酔っ払いは責められない」

「でも・・・マジでごめん~!!」

 あたしは何とか笑ってみせた。

「・・・大丈夫。これで玉砕は決定だけど。何とかなるよ」