キウイの朝オレンジの夜



 もうバス出ますよ~!先行きますね~!と叫んで、あたしを連れて走った。

 何とか席に戻り、あたしを座席に押し込めてから顔を覗き込む。

「・・・生きてる?」

「死んでる。・・・いや、死ぬ」

 あーあ。と隣でため息をついて、菜々はビールの缶を開けた。

「まさかまさか!ビックリよね~・・・。あたし噂のイケメン稲葉支部長見たかったけど、あんたの話を聞いた後じゃあ・・・」

 そして勢いよくビールを煽り、でも!と手を振り上げた。

「宴会だって上司席に座るんだろうし、あたし達はあたし達で楽しくやろうよ!温泉なんだから基本的に男女別だしさ~」

 あたしは何とか頷いた。

 ・・・そんな・・・稲葉さん、来るんだ・・・。そんなこと一言も言ってなかったじゃないのよ~。

 でもこのバスにも乗ってないんだから、後からくるんだろうな。多分、同じように急遽参加になった他の支部長達と。

 それから宿までのバスの行程2時間ほどは、あたしは鬱々として過ごす羽目になった。

 だけど豪勢な旅館について、その広さと綺麗さ、露天風呂の素晴らしさに感動し、段々テンションがアップしてきた。

「おおお~!」

「先お風呂いくでしょ?」

 菜々の誘いに勿論と答える。夜7時からの宴会までは自由時間になっていた。