キウイの朝オレンジの夜



 あたしは呆然と周りを見渡す。しかも、オレンジジュースを注文していたらしく、すぐにそれが運ばれてきた。

「この寒いのにオレンジジュース。稲葉の言ってた通りだな」

 面白そうに楠本さんが前から言う。

 あたしはストローを出す手を止めて、顔を上げた。

「はい?」

 あたしのオレンジジュースを長い指でさして、彼は言う。

「うちの神野って営業は、朝は朝礼が終わると同時にキウィを食べるし、残業中はオレンジしか口にしないんだって聞いたことがある。どうして?」

 ううう・・・。何で稲葉さんはそんな微妙な情報を楠本さんに話すのよ~・・・。瑣末なことですので、放っておいて下さい。って言いたいけど言えない。

 あたしはストローをジュースに突っ込みながら小さな声で答えた。

「・・・ビタミン摂取の為です。つまり、初めはそうだったんですけど、今ではただの習慣で」

「習慣。うん、成る程ね。さっきはコーヒー選んでたのに、ここにきたらオレンジジュース頼んだのが不思議だったんだ。放心状態にあって、無意識だったのか」

 ハスキーな声で、楠本さんが言う。

 ・・・・あたしったら!!放心状態なのまでバレてますから。めちゃくちゃ恥かしいですから!