ドキドキと心臓が鳴り出した。車の中は沈黙が支配している。あたしは自分の鼓動の音が聞こえるんじゃないかと更に緊張した。
うわあ~・・・怖い。どうしたらいいんだろう。稲葉さん、何考えてるんだろう。ってか、あたし行き先言ってないし。どこに向かってるんだろう、この車・・・。
ごくりと唾を飲み込んで、そろそろと隣を振り返った。
―――――――ら。
何と稲葉さんはあたしをじいーっと見ていた。
ぎゃあ(泣)
「あっ・・・あの、支部長?」
「うん?」
「前、前見てください!!運転中ですよね、今!?」
今度は恐怖で緊張したあたしが慌てて前を指差す。稲葉さんはたまにちらりと前方を確認するけど、相変わらずあたしをじいっと見ている。
「支部長ってば!!」
一般道だよここは!通行人もいれば信号もあるし、車だって周囲にわんさかいる。やーめーてーよおおおおお~!!
口元に笑みを浮かべてやっと稲葉さんはちゃんと運転席に座りハンドルを握って前を見た。



