キウイの朝オレンジの夜



「惚れても仕方ないような極上の男が支部にいて、独身の女が3人いるのよ!全員惚れても当たり前って稲葉支部長の赴任前から思ってたわよ」

 ――――――マジで!?凄いな、副支部長!固定給になれるはずだよ!泣き虫のくせに、そんなところはちゃんと押さえてるなんて憎いぜ。

「さっき気付いたんだもん!あたしどうしたらいいの!?」

 わたわたとパニくってあたしは叫ぶ。副支部長はあたしの隣の席に座りながら、ううーんと唸った。

「やっと繭ちゃんが片付いたのに・・・。どうしてこんなクソ忙しい時に~」

 すみません、面倒臭くて。あたしは頭を垂れた。

「だってだってだって」

「付き合いが鬼教官時代からだし、玉ちゃんは大丈夫と思ってたんだけどなあ・・・。やっぱり彼氏と別れたのはまずかったか!」

 舌打ちしそうな勢いで副支部長は言う。

 さあ、話してと、促されたので、あたしは泣きながら今日の出来事を話す。楠本さんが出てきた辺りで副支部長が挙動不審になったのには笑えた。

「見たの!?本物!?」

 あたしは涙を流したままにやりと頷く。

「見た。いい男だった!」

 羨ましいいいい~!と副支部長が絶叫した。やっぱり相当威張れることらしい。これは、絶対同期に威張らないと、あたし。

 でも流石既婚者の余裕だけあって、楠本さんの話題はそれだけで封印し、目下の課題よね、と稲葉支部長対策に頭をひねり出した。