男性二人が振り返った。そしてそれぞれが、微笑みを浮かべる。それはそれはゴージャスな光景で、あたしは、今死んだらこの光景が最後に残るのか、幸福だろうなあ!などとバカなことを思った。
「ありがとうございました。神野を宜しくお願いいたします」
稲葉支部長がそういうのに、梅沢さんは、表情を暗くして言った。
「そうだ、昨日うちの会社の男性社員が、神野さんに大変失礼な態度をとったんです。申し訳ありません」
男性二人が一斉にあたしを見る。あたしは慌てて手を振った。
「いえいえ、本当に大丈夫ですから!気にしてませんから!」
ゴージャスな美形に並んで直視されたら、鼻からの出血多量で死にそうだ。やめてくれ、そんな情けない死に方はしたくない。
「彼には私から、きつく言っておきましたので。本当にごめんなさいね」
梅沢さんがあたしに向かって言う。あたしは頭を下げた。
「ありがとうございます。でも、本当に、慣れてますから!」
むしろ、あの信田とかいう男に同情した。怖かった、あの梅沢さん。
あたしの返事に少しだけ笑って、では、と梅沢さんは男性二人に会釈をする。そしてヒールを鳴らして店を出て行った。
あああ~・・・・びっくりした。何て律儀な女性だろうか・・・。
あたしがほお、と息を吐き出していると、楠本さんに並んでカウンターに座った稲葉さんが、それで?と促した。
「はい?」



