「・・・俺が車なの、知っててやってますよね、それ」
「美味いぞ~。あ、お代わり下さい」
「・・・楠本さん」
がっくりと肩を落とす珍しい支部長をあたしは後ろからまじまじと見詰めた。
おやまあ、稲葉支部長完全に遊ばれてるじゃん。今日は噂の美形だけでなくて、珍しいものまで見れたわ~。
あたしは可哀想な稲葉さんと素敵過ぎる楠本さんから無理やり目を離して、梅沢さんに向き直った。
「すみません、中座しまして」
梅沢さんも今日はあたしとここに来ていたことを思い出したらしい。あ、と声に出して苦笑している。
「いえ、大丈夫よ。目の保養させて貰ったし、ラッキーだったわ」
そう言ってから、自分の荷物をまとめてマスター、お会計お願いします、と続けた。
「神野さん、今度、あなたが私にぴったりだと思うプランを作ってきてくれない?あなたの説明は判りやすかった。契約になるかは判らないけど、自社商品ではどんなものが出来るのか興味があるから」
おおお~!!あたしは驚いて目を見開いたけど、勢いよく頷いた。
「はい!」
宜しくね、と柔らかく微笑んで、梅沢さんは稲葉さんに近づく。
「私は失礼します」



